訪問歯科の今後の展望と課題について
疾病や傷病により通院が困難な方を対象とする訪問歯科は、歯科疾患の予防や咀嚼機能を維持するために必要な医療です。しかし、介護認定を受けている方の多くが、歯科治療や適切な口腔ケアが必要としているにもかかわらず、訪問歯科を利用できていないのが実情です。
本コラムでは、訪問歯科の実情と課題、これからについて考えていきます。訪問歯科の利用を検討している方は、ぜひご参考にしてください。
訪問歯科の実情と課題
「口の健康は、長寿の秘訣」ともいわれます。人生100年時代といわれているなかで、全身の健康を保つためにも、口腔環境の維持は大切です。口腔内の細菌は虫歯や歯周病を悪化させるだけでなく、誤嚥性肺炎や呼吸器系疾患、心疾患などの全身疾患のリスクを高める原因になります。そのため、疾病や傷病により歯科医院への通院が困難な方でも、訪問歯科による歯科治療や口腔ケアが非常に重要になってきます。
しかし、訪問歯科による治療や口腔ケアを必要とする方が多くいる一方で、実際に治療を受けている方の割合は少ないのが実情です。なぜなら、訪問歯科自体の普及率が低く、都道府県によっても訪問診療に格差があるためです。超高齢社会の日本では、2040年には人口減少とともに高齢者の増加が予測されています。歯科医院への通院が難しい要介護者の数が増えることで、訪問歯科の需要は益々高まるでしょう。
訪問歯科のこれからを考えていこう
超高齢社会である日本の歯科医療を具体的に改善するために、公益社団法人 日本歯科医師会では2040年を見据え以下、5つのビジョンを掲げています。
- ・健康寿命の延伸に向けた疾病予防・重症化予防に貢献する
- ・地域を支える歯科医療を推進する
- ・質が高く効率的な歯科医療提供体制を確保する
- ・個人の予防・健康づくりサポートする
- ・多様なニーズに応え社会貢献を果たす
この5つのビジョンのなかには、訪問歯科診療を行っている歯科医院を約2割増やすといった目標もあります。
また、令和4年度診療報酬改定の基本方針では、「質の高い在宅医療・訪問看護の確保」や「口腔疾患の重症化予防や口腔機能の維持・向上のための取組を推進」などの方向性が示されています。さまざまな医療機関や介護・福祉施設と連携をとり、訪問歯科診療の環境が整うことが期待されています。訪問歯科での歯科治療や口腔ケアを検討している方は、訪問診療を取り扱っている歯科医院へご相談ください。
- Q1:訪問歯科の課題はなにがありますか?
- A1:今後、需要が増えていく可能性が高いものの、訪問歯科の普及率が低いという現状が大きな課題です。また、訪問歯科の知名度や利用率が低い点も課題であり、国や地方自治体などと一緒に解決すべきといえます。
- Q2:訪問歯科の周知活動は行われている?
- A2:歯科医師会や在宅医との連携を強化しながら、地域の方へ周知する取り組みが大切です。ポスター制作や診察券へ記載するなどの取り組みを通じて少しずつ広がりを見せています。