歯科コラム

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歯周病はどういう治療を行うのか

歯周病は、細菌の感染によって歯周組織に炎症が起こる疾患です。初期段階では自覚症状がほとんどないため、気付かないまま放置してしまうことも少なくありません。歯周病が進行すると、歯を支える歯槽骨が溶けて歯を失う可能性があります。

そのため、できるだけ早期に歯科医院で適切な治療を受けることが重要です。

本コラムでは、歯周病の進行度別に行われる治療方法を解説します。治療の流れや正しいセルフケア方法もわかるため、歯周病の予防と改善に役立つでしょう。ぜひご参考にしてください。

歯周病の原因と基本的な治療方法

歯周病は歯周病菌による細菌感染症です。歯周病菌はすべての人の口腔内に存在しており、どなたでも歯周病を発症する恐れがあります。

口腔内が不衛生な状態が続き、細菌が増殖すると歯周病を発症します。歯周病の直接的な原因は、歯に付着した「歯垢(プラーク)」です。

歯垢とは、歯の表面に付着している白色やクリーム色の粘着性物質で、細菌と代謝物が固まったものです。また、歯垢が石灰化したものを「歯石」と呼びます。歯垢や歯石を放置すると、増殖した細菌が毒素を放出して歯茎の炎症を引き起こし、徐々に歯を支える歯槽骨を溶かすため、早期治療が重要です。

歯周病の基本的な治療方法は、歯周病の原因となる歯垢・歯石を除去し、適切なセルフケアを続けることにあります。

歯周病治療の流れ

歯周病治療の流れは以下の通りです。

  • ・検査(レントゲン、歯周ポケット検査)
  • ・歯周基本治療
  • ・検査
  • ・歯周外科治療
  • ・検査
  • ・メンテナンス

検査で歯周病だと判明した場合は、歯周基本治療が始まります。歯周基本治療や歯周外科治療の後は、治療の効果を確かめるために検査を行う必要があります。

歯周病の進行度に合わせて治療方法が異なるため、次章で詳しく解説します。

【進行度別】歯周病の治療方法

歯周病は軽度・中等度・重度の3段階で進行します。歯茎の炎症のみの状態が「歯肉炎」、炎症が広がり歯と歯茎の溝(歯周ポケット)が深くなった状態が「歯周炎」です。

初期段階の歯肉炎では痛みがないため、歯周炎が進行するまで歯周病に気がつかないケースがあります。

軽度〜|歯周基本治療

歯周基本治療は、軽度〜重度までの歯周病に共通する治療方法です。歯肉炎や軽度の歯周病であれば、歯周基本治療だけで症状が改善する場合があります。歯周基本治療では、以下の方法で歯周病の原因となる汚れの蓄積を防ぎます。

  • ・プラークコントロール
  • ・歯垢、歯石除去(スケーリング)
  • ・噛み合わせの矯正

プラークコントロールとは、歯垢を除去して歯周病のリスクを下げる取り組みです。セルフケアや歯科医院での歯垢・歯石除去(スケーリング)によって、歯周病の進行を食い止めます。

また、噛み合わせが悪く、歯茎や歯槽骨に負担がかかっている場合は、噛み合わせの矯正も必要です。

中程度〜|歯周外科治療

歯周基本治療で歯周病が改善しない場合や歯周ポケットが深くなりすぎた場合は、歯周外科治療が必要になります。歯周外科治療は以下の2種類に分けられます。

  • ・フラップ手術
  • ・歯周組織再生療法

フラップ手術とは、歯周病の原因となる汚れや歯石を除去する手術です。歯茎を切開し、歯根を露出させて蓄積した汚れを徹底的に除去します。

歯周組織再生療法とは、特殊な材料を使用し、失われた歯周組織を再生させる手術です。症例に合わせて以下の3種類から選択します。

  • ・エムドゲイン法:エムドゲインと呼ばれる特殊なたんぱく質で再生能力を発揮させ、骨を再生する治療方法
  • ・リグロス法:エムドゲインと同様に骨を再生する治療方法で保険適用可能な治療方法
  • ・GTR(Guided Tissue Regeneration)法:メンブレンと呼ばれる特殊な膜で歯周組織を再生させる治療方法

症状や予算によって選択できる治療方法が異なります。リグロス法・GTR法は保険適用で治療可能です。一方、エムドゲイン法は自費診療のため、費用が高額になる可能性があります。

重度|歯周補綴・抜歯

歯周病が進行すると、歯槽骨が溶けて歯が動揺し、最終的に抜け落ちます。重度の歯周病では食事やプラークコントロールに支障が出るため、抜歯を防ぐ手段として歯周補綴を実施します。

可能な限り抜歯せず、重度の歯周病を治療する際に用いられるのが歯周補綴です。被せ物で動揺する歯を固定する方法で、インプラントや矯正治療を併用するケースもあります。

ただし、抜歯が避けられない症例もあります。例えば、歯周病の歯が複数の歯に影響を及ぼす恐れがあるケースでは、ほかの歯を守るために抜歯が必要です。

歯周病を防ぐための正しいセルフケア方法

歯周病の進行を防ぐためには、歯科医院での治療と口腔ケアが必要不可欠です。歯科医院で適切な治療を受けても、セルフケアを怠ると歯周病が進行する恐れがあります。

毎日のセルフケアでは、歯間ブラシやデンタルフロスを取り入れ、入念にケアしましょう。歯ブラシは歯と歯茎の境目に対して、45度の角度で当てて磨いてください。1箇所につき20回を目安にブラッシングすると、磨き残しが減ります。

歯並びが悪く、歯ブラシが届きにくい箇所があると、磨き残しによって歯垢が蓄積し、歯周病の原因となる恐れがあります。

当院では、歯周病の治療や不正咬合の矯正治療を提供しており、口腔トラブルへのトータルアプローチが可能です。歯並びや歯周病についてお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。

Q1:歯周病は再発しますか?
A1:歯周病は再発しやすいといえます。歯垢や歯石を除去できても、歯周病菌そのものを完全に除去するのは難しいため、セルフケアを怠ると再発します。
Q2:歯周病を放っておくとどうなりますか?
A2:歯周病を放置すると、歯を支える骨が溶け、最終的に歯を失う原因になります。また炎症が全身に影響を及ぼし、心疾患や脳卒中のリスク上昇、糖尿病の悪化などが指摘されています。
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