歯科コラム

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歯周病を放置するとどうなる?自然治癒はするの?

「歯周病予防を勧められたが忙しくて放置している」 「腫れや出血が収まったから自然治癒するのでは?」とお考えの方も多いかもしれません。

しかし、歯周病は進行性の疾患であり、放置すると歯を失う原因となるだけではなく、全身疾患のリスクを高めます。

本コラムでは、歯周病を放置する危険性や自然治癒の可能性について解説します。歯と全身の健康を守るために、ぜひご参考にしてください。

歯周病は自然治癒する?

歯周病はセルフケアだけでは自然治癒しないため、歯科医院での治療が必要です。歯茎の腫れや出血などの症状が収まっても一時的なものであり、放置すると症状が悪化します。歯周病の進行を抑えるには早い段階での治療とセルフケアが大切です。

歯周病ってどんな疾患?

歯周病は細菌による口腔内の疾患です。歯肉炎と歯周炎を合わせて歯周病とよびます。

歯肉炎は比較的軽度の状態で、歯と歯茎の隙間から細菌が侵入し、歯肉に炎症を起こします。歯肉だけでなく、歯を支える骨にまで影響する歯周炎は、歯槽骨を溶かして歯の動揺を引き起こします。

歯周病の原因は歯周病原菌が含まれる歯垢(プラーク)の蓄積です。細菌の増殖と歯肉の炎症が進み、歯周ポケットが深くなります。

歯周病を放置するとどうなる?

歯周病を放置すると口腔内で炎症が広がり、以下の危険性が高くなります。

  • ・歯の喪失につながる
  • ・全身疾患につながる
  • ・認知症の危険性が高くなる

これらを詳しく解説いたします。

歯の喪失につながる

まず歯周病で見られる症状として、以下が挙げられます。

  • ・歯肉が腫れる
  • ・歯茎の色が濃くなる
  • ・触ると出血する
  • ・口臭が気になる
  • ・歯と歯の間に隙間ができる
  • ・歯の動揺が見られる

軽度の歯肉炎の状態だと、歯科医院での歯石除去や自宅でのセルフケアで炎症を抑えられます。

しかし、歯周ポケットが深くなるにつれて隙間にプラークが入り込みやすくなり、歯を支える歯槽骨にも影響を及ぼします。

末期の歯周炎では歯周病原菌が深部まで入り込み、歯槽骨のほとんどが溶けて歯根が露出し、歯の喪失につながります。歯を失った箇所は入れ歯治療やブリッジ治療、インプラント治療などでカバーします。

全身疾患につながる

歯周病原菌や炎症性物質が血流に乗って全身を巡ることで、以下のような全身疾患のリスクが上昇します。

  • ・糖尿病
  • ・心疾患
  • ・慢性腎臓病
  • ・呼吸器疾患

歯周病と糖尿病は密接な関係があり、互いに悪影響を及ぼします。歯周病が進行すると、炎症による毒素が血液中に入り、血糖値を下げるインスリンの働きを妨げ、糖尿病の症状を悪化させる可能性があります。

また、妊娠中の女性はホルモンバランスの変化や唾液の分泌量低下により歯周病になりやすいため注意が必要です。近年の研究では、歯周病は早産・低体重児出産のリスクを高めることも示唆されており、妊娠中の口腔ケアは特に重要です。

認知症のリスクを高める可能性がある

歯周病はアルツハイマー型認知症のリスクを高める可能性があります。歯周病菌が脳内に炎症を引き起こすことで、認知機能の低下につながると考えられています。

また、歯の喪失は咀嚼機能や嚥下機能の低下、ひいては栄養不足を引き起こす原因です。ロコモティブシンドローム(運動器症候群)やADL(日常生活動作)の低下につながり、要介護リスクが高まります。

さらに、口腔機能が低下すると会話しづらくなり、他者とのコミュニケーションが減少すると社会的な孤立や抑うつにつながる可能性もあります。歯周病予防は単に食事を楽しむだけではなく心身の健康を守り、認知機能を維持するためにも重要です。

歯周病の治療方法は?

歯周病治療にはプラークコントロールが大切です。まずは歯周基本治療により、歯垢や歯石を除去して歯周病原菌の増殖を抑えます。炎症が歯槽骨まで到達し、歯の動揺が起こると外科治療や再生治療が必要です。

歯周基本治療では、歯の動揺や歯周ポケットの深さから進行度を評価し、専用の器具(スケーラー)で歯垢と歯石を取り除きます。さらに、ブラッシング指導で歯垢が溜まりやすい箇所を伝え、普段の歯みがきを改善します。

歯周外科治療では麻酔後に歯茎をメスで切開し、歯根を露出させて深い場所の歯垢や歯石を除去します。歯の表面に再生誘導物質を塗り、歯槽骨や歯茎が増えるのを期待する歯周組織再生療法もあります。

歯周病予防のためにまずは定期検診を

日本では45歳以上の方の過半数が歯周ポケットを保有しているといわれています。早めの歯周病予防を心がけましょう。治療後も再発する恐れがあるため、1〜3か月に1度、半年に1度など口腔状態に合わせて歯のメンテナンスを受けてください。

同時に自宅でのセルフケアが大切です。ブラッシングは歯周ポケットを意識し、歯間ブラシやデンタルフロス、殺菌効果のあるうがい薬などを併用すると良いでしょう。

また、生活習慣を整えることも大切です。免疫力を低下させないよう、睡眠を十分に取りましょう。栄養バランスのよい食事を摂り、ダラダラ食べや間食を控えて細菌の増殖を抑えます。 歯や全身の健康を維持するために、歯科医院や自宅での歯周病予防を始めましょう。

Q1:歯周病かどうかは自分でわかりますか?
A1:歯周病は初期段階では自覚症状が現れにくい疾患です。進行するにつれて「歯みがきで出血する」・「たまに歯肉が腫れる」・「朝起きたときに口の中がネバネバする」などの症状が現れます。
Q2:歯周病になるリスクが高いのはどんな人ですか?
A2:口腔ケアが不十分な方のほかに、喫煙者や40代以降の方、妊娠中の方、糖尿病にかかっている方に起こりやすいです。
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